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PPムブラー 滞在記


by astayatppmobler
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今日はケアホルム邸にお呼ばれの日。
でもその前に仕事も一生懸命しなければなりません。

No.62という椅子の笠木(かさぎ)と呼ばれる
背あてと肘置きが一緒になった椅子のパーツで重要な部分を
次から次へと削って仕上げていきます。
心なしか仕事のペースも上がっているような気がします。

仕事終了後のわずかな時間に、職人のアランに自分で作っているザ・チェアを見せて
削り方のポイントを教わりました。
これでフレームの部分はほぼ完成しましたので
残りは塗装と座面の革を張ることが残っています。
完成まであとわずか!

PPで少し残っての作業を終えて午後4時過ぎにケアホルム邸にケンと向かいました。
車ではそんなに遠くなく、
ほどなく海岸沿いの高級地に立つケアホルム邸に到着しました。

平屋でシンプルな直方体の形をした建物のケアホルム邸。
エントランスには砂利が敷き詰めてあって、
その上を音を立てて踏みしめながら玄関に向かいました。

玄関のドアを開けるとPP会長のアイナーとハンナさんが笑顔で出迎えてくれました。
ジュートのような草を編んだカーペットで敷き詰められた床の感触を確かめながら
リビングに入りました。

繰り返し本で見ていたリビングに入った時には少しドキドキしました。
シンプルで洗練されているケアホルムデザインの家具が部屋の所々に並び、
それでいてその一つ一つが自己主張しすぎることなく
部屋の中で自分の場所とも言うべき所に収まっています。

家は海に面して建てられていて
リビングを含むメインルームからは穏やかな海が一望できます。
しばし言葉を忘れて見とれてしまう程の景色です。
リビングのすぐ外にはデッキが作られていて
こちらにもケアホルムデザインのスツールがいくつか置いてあります。
こちらで飲むお茶もきっとおいしいに違いありません。

ハンナさんとは初対面ではありませんが、きちんと話をするのはこの時が初めてです。
私はデンマーク語が、アイナーは英語が苦手な為
私の話す英語をハンナさんがアイナーに通訳し
アイナーのデンマーク語をケンが私に通訳するという
少々面倒なお茶会が始まりました(笑)
私が当時もっとデンマーク語が話せていたら、
よりスムーズな会話になった事でしょう。

お茶会の初めに日本から持って行ったお土産をハンナさんに渡しました。
ハンナさんは日本の下駄や草履を収集していて、日本の物がとてもお好きな様でした。

お茶会もそろそろ終わりそうな時に、
私はもう一つ持って行ったお土産を出しました。
それはデンマーク滞在中にいつかは訪れるであろうウェグナーとの対面の時に
渡そうと思っていた日本製のうちわでした。
私はうまく気持ちが伝えられるよう、ゆっくり話し始めました。

「私は日本で家具職人をして、ウェグナーやPPに憧れを抱いていました。
今回、念願叶ってPPで研修することが出来て、
憧れの人であるアイナーに会う事が出来ました。
ただ、もう一人の憧れの人であるウェグナーにはどうも会えそうにありません。
アイナーと2人で話をした時に、やはり病状が思わしくない事を聞いて
私が会う事はできないことが良くわかりました。

日本にいる時から、ウェグナーは病気にかかっていることは知っていましたので
もし会えた場合、何をお土産に渡したら良いかとても悩みました。
ウェグナーは目が良く見えなくなっていることを聞いていましたので
目で見えなくても異国日本を感じてもらえるものは何だろうか?
色々と考えた末、このうちわにしました。

このうちわは骨組みが竹でできていて、和紙が貼ってあります。
竹には節があり、触り心地やにおいも木とは異なります。
和紙には工場で作られた紙やプラスティックと異なる手触り感があります。
そしてうちわであおぐことで、何より風を感じることができます。
例え目が見えにくくても、
デンマークでは珍しい素材で作られたこのうちわの風を感じていただけたなら
きっと日本を想像してもらえるのではないだろうかと思いました。

家具職人でもある家具デザイナーのウェグナーであれば
きっとこのプレゼントを気に入ってくれるに違いないと思い、日本から持ってきました。
今回、残念ながらお会いできませんので、
アイナー、PPで研修をしている日本人からのお土産と言って
ウェグナーの所に持って行っていただけませんでしょうか?」

このような事をゆっくりと話しました。
この事はケンにも話していませんでしたので、少し驚いた様子でした。
英語が分からないアイナーも真剣な面持ちで私の話を聞いてくれて
ハンナさんの通訳した内容を聞きながら何度も頷いてくれました。

ハンナさんからは「イワオはきれいな心の持ち主ね」と言っていただけました。

楽しいお茶会の時間もあっという間に過ぎて行きました。
ケアホルム邸の素晴らしさと訪れた興奮の余韻に浸りながら、
ケンの車で家路につきました。



76、憧れのポールケアホルム邸へ 2_f0271949_16293253.jpg

Inagaki Design Works
http://www.inagakidesignworks.com
# by astayatppmobler | 2018-05-01 16:41 | PPmobler滞在記